譲る葉
「実はね…」

そう切り出す店長の顔が、何だか暗い。

私はその瞬間に、耳をふさげばよかったのかもしれない。

もちろん、結果は変わらないのだけど。


「今日で三日間、頑張ってくれたわけなんだけども…」

口調が、堕ちていく。

何だか、似ている。


この、嫌な感覚は―

今まで散々、受話器を片手に味わった

死にたくなる気持ち―


「実はね、こっちの事情で、来月いっぱいでこの店を閉めることになったんだよ」





その言葉を聞いた瞬間、頭の中が見事に真っ白になる。

奈落の谷に、突き落とされたかのような絶望感が

私の心を握り潰す。
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