はらり、ひとひら。


「心配かけて、すみませんでした」


客間に通され、彼は部屋に入るなり頭を下げた。



「風邪でも引いたのか?」

「はい。でも大分良くなったので」

「そうか。なら良かった。次からはきちんと連絡をいれるようにな」


矢野先生はポンポンと、神崎君の頭を叩いた。


「失礼します」


先程門前で対応してくれた人とは違う女性が、お茶とお菓子を盆に載せ入室した。姿勢をただし、失礼のないように緊張していると「ごゆっくり」と洗練された丁寧な所作で出て行った。


神崎くんの家、たくさんのお手伝いさんがいるみたい…ってそれもそうよね。こんなに広い御屋敷、少人数じゃ掃除とか大変そうだし。


矢野先生と遅れた授業のことを話している神崎くんをどこか遠く感じて見つめると、不意に気づく。



・・・あれ?神崎君、左手にケガしてる?

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