はらり、ひとひら。
諦めて目を瞑った時だった。意識が深く沈んでいく。
『おい、目を覚ませ。逃げろ。お前、死ぬぞ』
…誰?
聞き覚えのない優しい声。私幻覚のみならず幻聴まで…あぁでも、これも夢だよね。なら…いいか。どうせすぐ、目が覚めるはず。
『しっかりしろ』
関係ないでしょ。だってどうせ夢だもの、何もかも。夢じゃなきゃあんなお化け説明つかないじゃない。
『夢じゃない、目を覚ませ。死ぬのが恐いのなら意地を見せてみろ』
力はお前の中にある、声はそれだけ言い残すと聞こえなくなった。
はっと目を開けた。まさに、妖怪の大きな口が私を食べようとぽかりと開いていた。
ちがう。これは、夢じゃない。
「─放して!!」