はらり、ひとひら。
家に帰ると「ただいま」もそこそこに自室に籠った。心配した弟が何度も部屋のドアを叩いたが、無視して声を殺し泣き続けた。
なにがこんなに悲しいのか、自分でもわからない。
「杏子…」
私が起きたのはすっかり日が暮れてからだ。仕事から帰って来た母が、なんともいえない顔をしている。
「何かあった?」
「…」
優しい声にまた鼻奥がツンとした。答えられず無言でいると、母が手を引いた。
「杏子、ちょっと来なさい」
私たちは、かつておじいちゃんの使っていた部屋へ共に入った。