はらり、ひとひら。
じっと見つめると、師匠は観念したように低い姿勢を解いた。…よかった。
「ようやく信頼してもらえたようだね。…そうだ、代わりと言っちゃなんだけど、こいつ等に件の妖、手伝ってもらえばいいんじゃないかい?」
「─!」
神崎君は視線を彷徨わせ、言葉に詰まっているようだった。何かあるのかな。
「何をこそこそ話している」
苛立ち始めた師匠を神崎くんは一瞥すると、頷いて左手の包帯を外し始めた。…やっぱり、妖絡みだったんだ。
「これ」
「っ」
包帯が解けたそこに浮かび上がる赤黒い模様。ただの怪我じゃない…まがまがしいほどの妖気を感じとり、くらりとした。
「厄介なことになったんだ。蓮(れん)の烙印(らくいん)を押された」
わずかに、灯雅さんの声のトーンが落ちる。
「蓮の烙印…?」