はらり、ひとひら。
「びっ…くりしたあ」
「灯雅、いきなり出てきたら誰でもびっくりするよ。俺も驚いた」
まさかの主まで。灯雅さんはくすくす笑った。意外とこの人お茶目だな。
「冷たいこと言わないでおくれよ、式神として主を守っちゃいけないのかい。いつでも面倒な奴が出たら叩けるようにしてんのにさ」
つんつん、彼女は神崎くんの頬をつつきまわした。
「灯雅、離れて」
「つれないねえ」
そのとき、師匠が鞄から顔をひょっこり出した。
「色ぼけ鴉め」
「ぎゃあっ」
にゅっと這い出た白に驚き鞄を思い切り閉めると、「ふぎゃっ」という師匠の悲鳴が聞えた。しまった、つい反射で。
「~~このちんちくりんの杏子めが!」
「ごめんってば!」
ぴいぴい怒る師匠を宥めるのに必死な朝は、泣けるくらい平和だった。