はらり、ひとひら。
私たちの住んでいる町は都会とは言い難く、バスも電車も一時間に一本ほど。交通は不便だが、のどかな場所である。山々に囲まれた緑豊かな町だった。今では森に入る人こそ少ないけれど、妖たちが住むには非常に住みやすい環境なんだろう。
「まだ明るいのに、ひどい邪気だな」
「・・・あぁ」
灯雅さんと師匠が顔をしかめる。
「こっちだよ」
灯雅さんが先頭に立ち、案内をしてくれる。確かになんだか、空気が淀んでいる気がする。
池が近いのか、「この先立ち入り禁止」と書かれた古ぼけた看板と、細い注連縄(しめなわ)が張ってあった。
「う・・・なんか、吐き気がする」
「気を強く持て。じゃないと呑まれるぞ」