はらり、ひとひら。
「心配かけてごめん。ちょっとお腹痛くて寝てただけだから!」
涙を目に溜めた母を見ないふり。悲しむ母をみるのは耐えるに忍びない。
「─あ、私勉強しなきゃ。春から一応高校生だし」
「待って、杏子…っ」
私は妖怪なんてそんなもの、見えない。
あれは夢だ。夢だ。夢だ。
─でも、どこからどこまで?
左手の手の甲に、木の枝で引っ掻いたような傷がみえた。
「っ」
立ち上がったけど、足に上手く力が入らない。
自分の意識とは無関係に、身体がぐらりと前に揺れる。
「杏子!」