はらり、ひとひら。
それからいつまで待っても、翁はやってこなかった。雨の日も、風の日も、待てど暮らせど来なかった。
─静かだ。
寂しくなどない。元の生活に戻っただけだ。寂しくなど─
「それにしてもあの爺さん、死ぬ間際まで変わり者だったな」
「神様がなんとかってなあ。いよいよ頭までおかしくなったと思ってたが…何が悲しくてこんな面倒事やらなきゃいけねんだか」
「仕方あるめえよ。頼まれたんだからやるしかねえ」
「こんな辺鄙な池に神様なんて住んでるはずねえのにな」
翁の代わりにやってきたのは村の、若い衆だった。
「そうか…」
あれは、死んだのか。