はらり、ひとひら。


それからはよく覚えていない。冷たくなる老婆を茫然としながら眺めていた。


そしてわかった。人は愚かで冷酷だ。


笑った翁の顔を思い出す。ただ生きて、何が悪い。




─我を忘れた私は森から飛び出したのだ。



堪え切れぬ怒りから私の額には角が浮き出、花から吸い取った精力で村を焼きつくした。



怒りの炎は雨さえも弾き、村は三日三晩燃え続けた。



若い衆は跡形もなく灰になった。




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