はらり、ひとひら。


光から解放され、


「私の心を見たな─」


ふわり、蓮の池に舞い降りた彼女。その声はひどく優しいものだった。


「すべてお前が見た通りだ。私はずっとこうなりたかった。嗚呼ようやくこれで、解放される」


─ピシ・・・。


「─!」


般若の面にヒビが入り、音を立てて朽ちた。さらさらと砂のように流れるかけらが消える様は、彼女の長い年月のあいだ抱えていた穢れすら解かしているようで…


「ありがとう、人の子」



般若の面は、とても優しい面(おもて)へと変わったのだ。あぁ、彼女の昔の記憶、そのままだ。





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