はらり、ひとひら。
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「ただいまー」
「お帰り。ありがとう!」
半そでのTシャツは汗びっしょり。
買い物袋を母に渡し、着替える前に洗面所へ向かい、顔を洗うことにした。ヘアバンドで前髪を留め上げ、鏡を見ると─。
「ぎゃあ・・・!?」
叫ぼうとしたけれど、後ろから口を押さえられ出来なかった。
鏡に映ったのは妖だった。
「静かにしてくれ。そうすりゃ悪いことにはしない」
着物も髪も真っ黒だ。顔にはなんとも面妖なお面。
とりあえず私は拘束を解くため、こくこくと頷いた。