はらり、ひとひら。
「─っ」
「病でね。昔から、身体があんまり丈夫じゃなかったらしいんだ」
真夏だというのに体が凍りつく。女性の手入れが行き届いた庭から聞こえる蝉の声が、どこか遠い。女性はさらに続けた。
「まだ若かったのにねえ…それに、綺麗なひとだったよ。綺麗なべべ着て、いいとこのお嬢さんでさ。よく小さい頃家にも来たんだ。大きくなってからも、すれ違うと挨拶してくれたんだよ」
なぜかわからないけど、ヨウコさんだと確信した。縁側で庭を眺める常盤を見る。寂しげな背中に、私の方が泣きそうだった。
「その…いつごろ亡くなられたか、ご存じですか?」
「ううん確か…二十歳かそれくらいの時期だったかねえ」
気の毒に、と女性が悲しい声で嘆いた。