はらり、ひとひら。
はい、と静かに返すことしか出来なかった。暫く長い沈黙が流れた。…常盤はもう、ヨウコさんに会えない。静かな悲しみが心に広がり始めると、思い出したように女性は顔を上げる。
「お嬢ちゃんはヨウコさんのお知り合いかい?」
「い、いいえ。その…友人がかつてヨウコさんと仲が良かったそうで、少し前から連絡がつかないと聞いて。勝手ながら探すことにしたんです」
「まあまあ。お友達思いねえ」
女性は優しく微笑むと、ちょっと待ってね、と言い残し部屋から消えた。
「…綺麗だな」
「常盤─」
手入れの行き届いた庭をじっと見つめながら、彼は小さく呟く。風に揺らめく黒髪がおぼろげだった。
「なんとなくそんな気はしていたさ。ヨウコが優しい人間に愛されていたようで、よかった。そんなに悲しい顔しないでくれ、あなたが嘆くことじゃない。全て知れて、俺は満足だ。─ありがとう」
振り向いた彼は深々と顔を伏せた。こういう時、なんて言ったらいいのだろう。