はらり、ひとひら。


「あぁ、あってよかった…お嬢ちゃん、これよかったら」


帰って来た女性が手にしていたのは一枚の写真。渡されたそれを覗き込むと、小さな少女が淡い色の浴衣を着て笑っていた。なんでだろう、なぜかわかる。


「これは…」


ヨウコさん。


「そう。まだ随分小さい時の写真でね。あの子んちの爺さんがうちの旦那と仲良くて家によく来てたんだけど…可愛いだろう、可愛いだろうって自慢して、くれたのよ」


写真の中、少し緊張した笑顔をつくる幼子。大きな目と視線がかちあって、ぐっと張りつめたものが溢れだしそうなのをこらえた。女性はにっこりはにかんだ。


「そのお友達に、渡してくれる?」


「っありがとうございます…!」


西瓜をご馳走になったお礼と、話を聞かせてくれたお礼、写真へのお礼、重ねて何度も頭を下げると女性は「いつでもまた来て」と笑った。温かい人だ。ヨウコさんもこの優しさに触れて育ったんだ、と思うとまた少し切なくなった。




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