はらり、ひとひら。


ヒグラシが声高らかに鳴く夕時、オレンジ色の道をふたりと一匹で歩いた。


「これ、常盤が持っていて─あなたが持っていた方が、きっとヨウコさんも喜ぶよ」


写真を彼に手渡すと、声も出さずに一心に見つめていた。


「ああ─綺麗だな…」


やがて小さくそれだけ呟いたのだ。


「うん。綺麗ね」


頷いて、下を向いた。


家につくと、長旅の疲れからか私はあっという間に寝てしまった。いつもの寝苦しさも全くなく、ひやりとした手が私の手を包んでいたようで、不思議に思いながらも存外それが心地よくスッと眠りに落ちたのだ。


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稚児のように眠る人の子を見て、静かに手を放した。


「狐。お主にも世話をかけたな」


「全くだ。用が済んだらさっさと行け」


「杏子が目を覚ましてから直接礼を言いたい。もう一晩だけ、ここへ居させてはくれないか」


「…勝手にしろ」


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