はらり、ひとひら。


「ん、あれ…?」


珍しく早く目が覚めてしまった。なんだか長い夢を見ていた気がする。


「…」


部屋を見回すと、隅の方で壁に凭れた常盤が眠っていた。大切そうに手中で握られた写真。ぐしゃぐしゃになっちゃうな、と手からそっと抜き取ろうとする。


「起きたのか」


「わっ」


突然動いた常盤にびっくりして飛び退く。自分でも見事な身のこなしだ…。


「猫のようだな」


「急に喋ってびっくりしたんだもん…!」


それはすまない、と悪びれる様子もなく常盤は笑った。



「夢を見たの。なんだかよく覚えていないんだけど、優しい人が優しい女の人と出会って…すごく楽しそうだった。だけど最後は男の人はどこかに行っちゃうの。…女の人は泣きながら笑ってた」


なんて言ってたんだっけ。
















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