はらり、ひとひら。
常盤の腕を掴んで冷えた手に触れる。ゆうべ、眠りに落ちるまで私の手にあった温度と酷似していた。
ヨウコさんはどれだけ彼に触れたかっただろう。常盤が人でなくとも傍に居たいと本気で思っていたんだ。
「─そうか」
良かった、本当に良かった。繰り返し呟く常盤はやがて無言でヨウコさんの映る写真をじっと見つめた。
「これで、心置きなく眠れる。あれの傍に行くことができる」
「トキ─」
「ありがとう、優しい人の子。人と話したのはヨウコ以来だったが、楽しかった。相変わらず可愛らしい、なんと変わった生き物か」
待って。まだ行かないで、ようやく夢を思い出せたの。寂しそうにひとり木の上、来ないとわかっていても待ち続けたんでしょう。
ひとりで、ずっと。
「さらば」