はらり、ひとひら。
「─常盤!」
夏の明け空に隠れるように常盤は消えてしまった。
もう呼ばれることはないとわかっていても、会えないとわかっていても、想うだけで満ち足りる恋。
私もいつかそんな風に誰かを想える日がくるのだろうか。
涙が不思議と止まらなくて、枕に顔を埋めて声を殺して泣いた。
長いこと師匠の温かな体温を傍に感じていた。窓から差す日がじわりと肌を焼いたが手の中にはまだ常盤の温度があるようで。
見えなくてもまだそこにいるような気がして。
「まったく…絆されおって」
泣き疲れ、寝ぼけ眼で見上げる視界の端で師匠がタオルケットを掛けてくれていた。
─一度出会ってしまえば、忘れることが出来ないのは人も、妖も同じなんだよ。