はらり、ひとひら。
うっとりと目を瞑った彼女の顔は、晴れやかだった。彼女だけでも、笑っていてよかったと目元を擦った。
「そう」
「…色々世話になったわね。ありがとう人の子」
「ううん。こちらこそ、ありがとうでいっぱいだよ」
「本当おばかね。さあもう、瓦礫に巻き込まれないうちに帰りなさい」
頷くのが精いっぱいだった。
─妖に出会ってすぐのころは、妖が常に奪う側だと信じて疑わなかった。人は弱いから常に奪われる側。
だけど人も大概だ。
日常的に、奪う行為をたくさんしてる。ひび割れ崩れていく美術館はまるで、みっちゃんの心を現しているよう。
妖も人も、互いが互いを傷つけ奪い合って生きている。
「それが生きるというもの」