はらり、ひとひら。
「な、なんですかいきなり」
「んー。なんとなくだよ」
ははは、と先生の笑いが耳に届く。
「・・・先生は信じてるんですか?」
「勿論。見えるもんなら一回でいいから見て見たいよ。憧れなんだ」
憧れ…。先生は窓を拭きながら遠くの山を懐かしむように見つめた。
「椎名はどう?」
「・・・どうかな。うーん、わかんないです」
笑って適当にごまかした。
「オレ、ゴミ袋取ってくるな」
「あ、はい」
滑りの悪そうな音がして、扉が閉まった。
「・・・びっくりした」
妖が見えない人にとって、妖怪はどんな存在なんだろうか。私も少し前まで見えない側の人間だったけど─。