はらり、ひとひら。


「お前、顔色悪いぞ!何かあったのか!?」


「な、何もありませんッ・・・!」


涎を垂らして妖が近づいてきた。


「お、お願いだから放し・・・」


振り返る。大きな妖は、矢野先生を見ると罰が悪そうな顔をした。


「チッ─今日のところは引いてやるか」


忌々しげにつぶやき何の余韻も残さずに消え失せた。


「っ、なんで…?」


「椎名。…一体何があったんだ?」


「本当になんでもないです」


おかしい。人間二人を相手にするのは面倒だから、退いた?


でも、何故。ぐるぐる頭が混乱する。
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