はらり、ひとひら。


「その前にそこの狸、私は尾裂狐ではない。九尾の狐だ。恐れ戦くがいい」


師匠はどろんと変化しゴンの首根っこを掴んだ。突然大きくなった師匠に驚いたゴンは言葉に詰まっていた。


「こ、ここ怖くなんかないぞ!」


「こら師匠!怯えてるからやめて!大人げない!!」


ぎゅっと耳を摘まむと「ぎゃあ」と短く悲鳴をあげ、師匠はもとの小さなもふもふに戻った。


「な、なんだったんだ今の」

「気にしなくていいから。それで何があったの?」


「…おいら、この前森で修行してたんだ」


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狸は弱い妖だ。だから父上も母上も死んでしまった。…姉上も。


だけどおいら、強くなりたい。自分の身くらい守れるように、胸を張って里に帰れるように。


「てりゃあ!」


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