はらり、ひとひら。
全身の血が冷めていくようだった。
「ふ、ふざけるな!!約束が違うじゃないか!」
「妖が約束を守るとでも?せいぜい、指をしゃぶって見ているがいい─哀れな薄汚い子狸よ!」
森に朱獅子の笑う声が響いた。
「畜生…!」
「足掻いても無駄ですよ、その縄は外れません。安心なさい、娘を喰ったあとお前は見逃してあげますから」
畜生、一瞬でもこいつを信じたおいらが馬鹿だった。
こんなことになるならアンズを起こして素直に助けを求めればよかった。
“弱いなら強くなれるまで守ってあげるから”
“ここにいていいんだよ”
アンズの声が、鮮明に色づく。
「アンズ、来ちゃだめだ、アンズ!!」
涙で霞む視界。おいらは必死に、その名を叫んだ。
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