はらり、ひとひら。


【白狐side】


「チッ」


ここでもない。一体何処へ行った、あの子狸は。まったく手のかかる。


一言も残さずに消えるとはとんだ恩知らずな奴だ。


行方知れずの子狸を探し、化けて森を周っていたがいよいよ空が明け始めた。まずい、急がなければ。



「ん?」


家から飛び出して来たのは寝巻き姿の杏子だった。



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