はらり、ひとひら。
【杏子side】
私は師匠にしがみついた。お願い、間に合って。
「あっちだ」
師匠は上空から森の一点に視線を向け、一気に急降下した。
「落ちるなよ、杏子」
「うん!」
ふわりと地へ着地した師匠の背中から飛び降りる。と、そこに音もなく現れた影。
「これはこれは。朝早くからどうも」
「朱獅子…!」
気圧されるほどの妖気。これが神に限りなく近い妖。師匠と初めて会った時のような感覚だ。…空気が違う。