はらり、ひとひら。
「で、こっちの反応式が─」
いつも通りだ。いつもとなんら変わらない、矢野先生。
頭がぼんやりする。願わくば夢であってほしい。
一緒に行ったお見舞い、オレンジジュースをくれたあの日、理科準備室の掃除…ほかにも多くの思い出がよみがえる。
今までのことが、まさか全部嘘だったとしたら…
そう思ったらまた、世界が滲んだ。慌てて目を乱暴に擦る。─結局、ノートに一文字も写せないまま 理科の授業は終了した。
日直が号令をかけ、先生が教室から出て行く。
それをぼんやりと見つめていた。
「そうだ、椎名と神崎。ちょっと来てくれ」
え…?
一瞬だけ神崎君と目配せして先生のもとへ駆け寄った。