はらり、ひとひら。
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どこへ行くにもいる、可笑しな生き物。図鑑を調べても載っていない、大人に聞いてもわからない。気味の悪い存在。
それはオレにしか見えていないようだった。
「せんせーっ、樹君がまた花瓶割ったー」
違う、オレじゃない。オレの横でけたけた笑う、妖怪のせいなんだ。
「もう、樹君!何度言ったらわかるの!?危ないじゃない!」
「ごめんなさい…」
なにを言っても、誰も信じてくれない。幼いながらに自分がおかしいだけなのだと理解していた。
「先生。先生は…見えないの?」
「なにが?」
割れた花瓶を片付けながら、面倒そうに聞き返された。
「そこに居るの…」
おずおずと妖怪を指差す。先生はその方向に首を向ける。青い顔で、
「変な嘘つかないで!」
と叫んだのだった。