はらり、ひとひら。


師匠が静かに呟いた。


「師匠、あの子このままじゃ…」


「自分の主の暴走だ。式神がその身をもって止めずどうする」


「!」



黙って見ていろ、と言われ口をふさいだ。そうだ、どういう経緯で先生の式神になったのか知らないが、あの二人は私たちよりずっと彼と長くいたはずだ。



「蛟!」


雪路に名を呼ばれた、龍が勢いよく先生にぶつかっていった。


「ぐああっ」


思いきりその攻撃を身に受けた先生は地に倒れ伏し、尚も翼で式神を傷つけようとする。でもその翼は、雪路の手により氷が張って、動かないようだった。


「クソ…!」


「…人の子たちよ、手出しは無用です。これは私たちの問題。巻き込んでしまい申し訳なく思いますが─どうか、見届けてくださいませ」



蛟に救いあげられ、なんとか先生の手から逃れた雪路の瞳が私たちを捉えた。先生を…ここで、殺す気だ。
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