はらり、ひとひら。


「椎名さん!」


神崎君が飛び出すより早く文言を唱える。



「淡き命(みこと)が形代(かたしろ)、天津風(あまつかぜ)にて放たれよ!」


札を投げつける。霊力のほんの少しのコントロール。頭をひたすら集中させた。



器は無事に、魂に根付く邪鬼だけを─剥がし、取り去る!



『ぎゃああっ』


「─出た!」



真っ黒い何かが、先生の口から飛び出してきた。あれが、跳ね返りの邪鬼。


『おのれぇ小娘ぇ…!よくも小賢しい真似を』



「下がって、椎名さん」

「え、あ…」


ちゃき、と音が鳴って華奢な指が刀に掛かる。



─あっという間だった。



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