はらり、ひとひら。
「この地に来て蛟に出会って。雪路は俺が学生の時─実家にいるときからずっと傍に居てくれた。妖を好きになろうって、努力をした。この地で、もっといい妖に出会えるんじゃないかと森に行った矢先…」
「あぁ、そうだ─オレはあのとき誰かに会っていた。オレは…」
先生は震える手で頭を押さえた。記憶が抜けている…?
「っ。そうだ、オレはそこで、これを渡されたんだ」
がさごそと先生は懐から何かを取り出した。小さな木彫りの…日本人形だ。ふつうのよくある人形であるはずなのに、どこか不気味な顔をしている。
師匠はそれを見ると驚いたような声を上げる。
「小僧。それは誰に渡された」
「それが、覚えてないんだ。お前たち、覚えているか?」