はらり、ひとひら。
先生に話を振られた蛟と雪路は揃えて首を振った。
「その日は確か、主様はひとりで外出なされたのですよ」
「う…そうだったか」
でも、その人形がなんだというのだろう。何か特別な力があるようには見えないけど…?
「…それも呪術の類だ。しかも人形術など、常人では操れんほどの危険な代物。おそらく妖狩りを行っていたのは別の人物。小僧を裏で操る奴が、別にもうひとり─いる」
なんだって?じゃあ先生はその人形を介して操られていただけってこと…?
「自らの手を汚さないために、先生を利用するなんてひどい!」
「術師など小賢しい連中ばかりだ」
先生の手中にある木彫りの人形を睨んでいると、じろりとその眼がかすかに動いた気がして飛び上がる。
「うわっ、動いた!」
ぶるっと震えた人形は、先生が驚いて手をはなすと同時に空中で粉々になった。