はらり、ひとひら。
「うーん…人の役に立ちたいなって思ってて。医療系とかいいなあって」
「そっか。素敵だね」
優しく微笑む神崎くんの笑顔を見て、あぁ、好きだなと思った。
なれるかはわからないけど、とりあえずの目標だ。家を離れて、町を出て─一人暮らしをしながら勉強して。お母さんも奨学金でもなんでも使っていい、と言ってくれた。…あぁだけど、就職して海斗に楽な思いもさせたいな。
将来を描くのは不安もあるけど、少しわくわくするなあ。
と、そこまで考えてはた、と気づく。
違う。私は─巫女だ。神に仕える妖を祓う、人々を、この地を守るお役目があるんだ。じゃあこの地を離れちゃ駄目じゃないか。すっかり忘れていた。
「─…」
「椎名さん?」
心配そうに覗き込む顔になんでもない、と首を振る。
「神崎くんは?」
「俺は、家を継ぐよ。先代…父はもう亡くなってるから、正式な後継者は俺しかいないし」
お父さん、亡くなってるんだ。お父さんがいないのは、私も一緒だ。