はらり、ひとひら。
ぐいっと腕を引かれて、後頭部に手の感触があった。何が起きているのかさっぱりわからなかったが、いつもより彼の匂いが近かった。
…抱きしめられていた。
体が固まった。指一本動かせない。
「か、神崎く」
「そんな顔でそんなこと言われたら、そういう風に受け止めるしかない」
ゆっくり顔を見上げるとかすかに彼の頬は赤かった。あの神崎くんが、顔を赤くしている。こうさせているのは、私。そう気づくと私まで真っ赤になった。
「ち、ちが、違うの。そうじゃなくて…」
海斗の声が反芻する。『彼氏じゃないの?』
違う、友達。…のはずなんだ。でももしかして、私は。
「…ごめん。冗談」
ぱっと、あっけなく離れた熱に寂しさを覚えて、自分でも馬鹿らしく思えた。