はらり、ひとひら。


「へ…?」


「あんまり必死だったからつい、からかいたくなったんだ。ごめん。…でも、駄目だよ本当に。男って単純なんだから」



大きな掌に頭を撫でられる。父親が愚図る子供によくやるような、優しい手つきだった。


からかわれてた…!?



「も、もう!神崎くんの人でなし!ず、ずるいよ…!」


そっちは慣れっこなのかもしれないけど、そういう方面に疎い私は免疫ゼロだ。ずるすぎる、罪すぎる。



「ごめん。でも、ありがとう。椎名さんは優しいね」


「神崎くんも、十分すぎるくらい優しいと思うけど…」


ぼんやり月明かりが照っている。今日はやけに明るいとおもったら、満月だ。



「…俺はそんなんじゃないよ」


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