はらり、ひとひら。
ゆっくり踵を返そうとした時だった。
「今晩は。椎名様」
「っ、朱獅子…」
ぶわりと背中に汗が滲んだ。
そういえば忘れていたけど、ちゃっかり約束してたんだった。妖狩りの犯人を捜す代わり、私を食べてもいいって。
やばい。どうしよう、祓うにも道具がないし、頼みの綱の師匠もいない。
「あの約束ですが」
こうなったら一回言霊を使って撒くしかない、と口を開きかけた時。
「実に愉快でした。楽しいものを見せさせていただけましたので、今回限りは特別に見逃して差し上げましょう」
「……えっ!?」