はらり、ひとひら。
隙を見て食うつもりなんじゃ、と思っていたことが見透かされたのか朱獅子は喉の奥で笑ってみせた。
「雑魚ならまだしも─相手があの狐では分が悪いというものです。いくら神格の私といえ、端から勝算のない戦いに首は突っ込みませぬ」
「そ…そうなの?」
「えぇ。ですがいつでもあの狐に嫌気が差したら、私を御呼びください。貴方の式神になっても構いませぬ。─血を分けてくださるのなら、ね」
やっぱり朱獅子は朱獅子だ。とりあえず笑ってごまかして、彼が去るのを待ってからようやく家に帰るため歩き出した。寿命が縮まる思いだった。
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温かな布団がどうにも心地よく、気がついたら意識を手放していた。
もうすぐ冬なのに、寒いはずなのに。なぜか、寒くはない。
夢をみた。
幸せそうに笑いあい寄り添う男女。