はらり、ひとひら。


「師匠、起きて、師匠」


ゆさゆさと肩を揺らすとじきにうっすら目が開いた。


「…杏子か」


師匠は立ち上がった。


月明かりに浮かび上がる師匠は、物凄く絵になる。毛色と同じ、透き通る髪色が眩しい。


「師匠、どこか行ってたの?ひとの姿に化けて」


「………野暮用だ」


「…」


「何故黙る」


いやいや別に?でもなんだ、さっきの間。まぁ…師匠にも色々あるか。失礼だと思い、詮索するのをやめた。


「私は疲れた。寝るぞ、杏子」


ふわりと、いつもの小さな狐の姿へと師匠は戻った。


< 382 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop