はらり、ひとひら。


私が布団に潜り込むより先に、師匠が滑り込んだ。


「ねぇ、師匠」

「なんだ」


「私、これから先どうしようかな」



暫くの沈黙。


「…私からは何も言えんぞ。お前の人生だろう。たかが百年も生きられぬ短い人生など、自分で決めるべきだ」


なんとも師匠らしいひねくれた返答だ。少しおかしくなって笑う。


「ねえ。師匠は、幸せ?」


私が問いかけたときには、師匠は既にすーすーと寝息を立てていた。


「…もう」


温かくて、満ちた心が幸福で。ふわふわの毛を抱きしめた。


星が、綺麗。


月の蒼さは、師匠に似ている。神崎くんと師匠は、やっぱりどことなく似ている気がして、少し切ないのだった。








< 383 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop