はらり、ひとひら。
私が布団に潜り込むより先に、師匠が滑り込んだ。
「ねぇ、師匠」
「なんだ」
「私、これから先どうしようかな」
暫くの沈黙。
「…私からは何も言えんぞ。お前の人生だろう。たかが百年も生きられぬ短い人生など、自分で決めるべきだ」
なんとも師匠らしいひねくれた返答だ。少しおかしくなって笑う。
「ねえ。師匠は、幸せ?」
私が問いかけたときには、師匠は既にすーすーと寝息を立てていた。
「…もう」
温かくて、満ちた心が幸福で。ふわふわの毛を抱きしめた。
星が、綺麗。
月の蒼さは、師匠に似ている。神崎くんと師匠は、やっぱりどことなく似ている気がして、少し切ないのだった。