はらり、ひとひら。
『今日は一段と冷えるでしょう。お出かけの際には暖かい服装で…』
天気予報士が指示した数字を見るだけで身体が震える。今日は本当に冷える。
「杏子。寒い」
「しょうがないでしょ。冬なんだから」
12月も終わり。もうすぐ、クリスマスだ。
「狐は寒さに弱いのだ。寒い。もう少し、暖房の温度を上げてくれ」
「だめ。電気代がかかるから、少しは我慢してよ。私だって寒いもん」
師匠はぶすくれて、9本の尻尾を巧みに使って 自分を包んだ。あ、くそうあったかそう…いいなあ。
「雪降りそうだね」
鉛色の空。なのに、どこか明るい。変な天気だ。