はらり、ひとひら。
「大丈夫だよ。着物も妖の匂いつけてあるし、心配いらない」
「そうそう。心配性なんだよお前は。…聞いたぜ椎名。今日の主役はお前なんだってな?」
茶化すように先生は笑うけど、そんな主役とか軽いもんじゃない。むっとする。
「もう!先生ってば。命がけなんです!代わってほしいくらいですよ…」
「悪い悪い。でも誇らしいことだろ。お前にしかできないんだ、胸張って行って来い。いざとなったらみんなで助けにいくからよ」
神崎くんも頷いた。私にしかできないこと。…そうか、そういう考え方もあったんだ。若干胸が軽くなった。
『椎名杏子様。椎名杏子様。白神様がお呼びです』
白い鳥が私たちの前にいきなり現れ、流暢に話した。
『祭壇へお上がりください』
「はい。…行ってきます」
みんなが頷いたのを確認して、私は人垣を掻き分け祭壇へあがった。