はらり、ひとひら。


「杏子と言ったか」

「はい」


緊張がピークだ。顔をみてはいけないような気がするけど、目を合わせないのはもっと失礼だ。…無礼のないように、言葉に気をつけないと。相手は神様だ。


「お前も呑め」


「す、すみません。私、お酒は呑めません…ごめんなさい」


「そうか。残念だ」


「え、えっと…お酌致します」


白神様は「頼む」と言ってお猪口を差し出した。


真っ白な手。雪のようだ。冷たそうだな、と思った。


「杏子、お前歳はいくつだ?」


「…3月に16歳になります」





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