はらり、ひとひら。
「そうか」
お猪口から零れないように、丁寧にお酒を注いでいく。お酒のことはよくわからないが、神がたしなむものなんだから相当高い上等品だろう。
白神様はお面を少し上へずらして、口元だけ覗かせてお酒を呑んでいた。
「杏子」
「はい」
白神様は私に向き直り、ずれたお面を被り直した。
「今日お前を呼んだのは他でもない。お前に頼みたいことがあったからだ」
「はい」
「二人だけで話がしたい。悪いが少し付き合ってくれるか?」
「…はい」
祭壇の下の妖数人が、ひそひそと「白神様がいよいよあれを食うぞ」と冗談でも笑えないことを言ったので正直殴り飛ばしたくなった。
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白神様に連れてこられたのは、小さな納屋だった。こんなところ、あったんだ。