はらり、ひとひら。
「頼む。この通り。お前にしか頼めんことなんだ」
「そんな…顔を上げてください、駄目ですそんな、祓うだなんて」
「白神は当の昔に滅びた。信仰する人間がいなくなり消えたのだ。私はあれとは友人だった。妖である私を卑しむわけでもなく、気さくに接してくれた」
消えた?神が?そんなこと、あるのか。
「天候神など所詮形だけの弱きもの。…が、奴のいなくなった祠をどうにも放っておけず、私は白神になりすましていた」
でもそれは、白神様を思ってのこと。思う気持ちがなければ、そこまでできなかったはず。
「考え直してください。白神様は白神様です、貴方の想いを踏みにじるような真似はできません」
言い終えてから、がたがたと、戸が音を立てて揺れていることに気づく。
なに…?雪が、強まっている。─吹雪いている。
「白神様…?」
「祓ってくれぬというなら、いっそ邪鬼にでもなればいいのか?」
「!それは駄目ですっ─」