はらり、ひとひら。
「だが…」
「大丈夫。もう二度と会わないさ」
化けていた姿から、もとの人の姿に戻りいつも通り笑って見せた白神。
だが、人の子は次の日も、その次の日もやって来た。
「あれ…今日もお兄ちゃんいないや。おーい、おーい!」
「やめなさい、もう。こんな山奥に人なんているわけないでしょう?」
「違うの、いたもん!本当だもん…」
おーい、どこ?お兄ちゃん。出てきてよ。おれいがしたいの。
声は止まなかった。白神は祠に座り、目の前を忙しなく駆け回る人の子を静かに見つめていた。
「…可愛いねえ」
明らかに情が湧いていたようだ。馬鹿なやつ、と小さく漏らすと白神は声をあげて笑った。
「神は無条件に人を愛してしまうのさ。妖は違うのか?」