はらり、ひとひら。
人を愛すだと?何を馬鹿なことを…人など弱く、愚かで自己中心的。全く哀れな生き物だ。
「私は違う」
「そう。少し惜しいが、もうこの娘に会うことは出来ない。…見えているのに、触れられないのはもどかしいものだね」
「─…人などすぐに、神や妖のことなど忘れてしまう」
それでも良いさ、私が覚えていればいい。と呟く白神の声はひどく悲しい色をしていた。
小さかった人の子も、ある程度成長すると、あの時の人間が人でないと気づいたようだった。
それからは祠へ定期的に手を合わせに来、手を合わせた。
「あの時は本当にありがとうございました」
美しく伸びた黒髪。人の成長は目まぐるしく…眩しかった。