はらり、ひとひら。


あの人の子は、数少ない白神の信仰者。私たちにすればあっという間でも、人にすれば長い年月が流れた。─人の子が祠へ訪れることがある日ぱたりと止んだ。




「人の一生は短いね」


「…ああ」


「信ずる者ももういないか。ならば潮時。すまないな、友よ」


「…逝くのか」


「うん」


人に必要とされなくなったとき─つまりは信仰者がいなくなったときが、神の最期。妖が信じたところで神は報われない。…だから人は嫌いなのだ。生み出したのはそっちの癖に、簡単に忘れていく。



だが…あの娘は違った。



「さようなら」



笑い、消えていく友を見つめながら、侘しさが心を占めた。


誰もいない祠。深々と降り積もる雪は、友からの最期の贈り物のようだった。
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