はらり、ひとひら。
【杏子side】
「いなくなった白神の後釜として…勝手とわかっていても、神になりすましてしまった。友の為にこうして毎年、いや。そんな大それたものではない。誰の為にもならない、所詮神がひとり死のうと妖にとっては些事だ。人にとっても同じく」
白神様…妖力の限界なのか、彼はがくりとその場に膝をついた。煌びやかな白い着物と面はざっと雪のように風化し、黒い簡素な着物を纏った姿へ変わる。ぼろぼろだ。
これが彼の本当の姿。
「っ、白神様、しっかりしてください!」
「やめてくれ、私はもうそれを名乗れない。嘘だったのだ、全て」
すまない、と笑って白神様は目を閉じた。…そんな。
「むっ、おい、あれを見ろ!白神の化けの皮がはがれたぞ」
「なに、どうなっている!?あれは妖ではないか」
「神はどこぞへ行った!おのれ貴様、白神を食ろうたな。我らを騙し、神に成りすますなど小賢しい!」
「っ、ちがう!そんなんじゃ─」
何も知らないくせに、知ったようなことを。勝手を抜かす妖たちに怒りがこみ上げる。