はらり、ひとひら。


【杏子side】


「矢野先生が担任でよかったなー」


今日は職員会議だから、私たちは早下校。


神崎君や飛鳥たちと途中で別れて、ひとりで家までの道をゆっくり歩く。あったかい…なんてうららかなんだ。眠い…


「あれ?」


なんだろう、これ。



ぽう、と薄く光る何かが、道端に落ちていた。


「うぎゃ、蛙…ん?な、なにこれ、魚?どっち…!?」


思わず大きな声をだしてしまい慌てて口をつぐんだ。


魚と言われれば魚だし、蛙と言われれば蛙だ。ウーパールーパーに近いけど、もっと小さいし、短い手足と尾ひれのようなものもある。


ぼやっと光ってる。おもちゃ?


あ─ちがう、妖だ。


酷く弱っているように見えた。このままじゃ死んじゃう…放っておけず、意を決して近くの水溜りまで運んであげた。


暫く水の中でじっとしていたが、妖は元気を取り戻したのか短い手足でゆっくり歩いていった。


「あぁ、良かった」


さよなら。





< 430 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop