はらり、ひとひら。


部屋に通し、座った瞬間彼女は私をじっと見た。意思の強い、探るような眼に気圧される。



「あの。貴女は誰ですか?」


いたたまれず口を開く。



「ああすまない、久しぶりに人を見たからつい。見ての通り、私は桔梗の花の化け妖。現在は人の姿をしているが、本来の姿は花。…特にこれといった名はない」



え。妖だったの?微妙に感じる妖気はそれかあ。なんだか彼女は困っているようだ。



「面倒事は御免だぞ」


ねめつける師匠に苦笑い。喋る真っ白狐には妖も少し驚いたが、さほど気にしていないようだった。
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